シンデレラは騙されない
星矢君の顔に微笑みが広がる。
「あれ、棚から何か落ちてきた。
これ、何だろう?」
そう言って、星矢君はそのリストをめくって凛様の電話番号を調べ始めた。
「星矢君、凛太朗って字、分かる?」
私が心配になってそう聞くと、星矢君はうんと頷いて必死にその名前を探し出す。
「あった!
先生は透明人間なんだよね?」
星矢君はそう言いながら、メモ用紙を持ってきて自分の拙い字でその番号を書き出した。
「星矢君、間違えてたら困るから、もう一度見直して。
宿題と一緒だよ」
透明人間のアドバイスを星矢君は笑顔で聞いた。
「じゃ、先生は普通の人間に戻ります」
そう言ってから、私は大げさに深呼吸をする。
「あれ?
ここに何か落ちてるけど、星矢君、これがどこから落ちてきたか分かる?」
私のわざとらしい演技に星矢君はクスクス笑いながら、そのリストがあるべき棚を指さした。
「ここね?
了解、戻しときま~す」
これで星矢君の心を痛めずに凛様の連絡先を知る事ができたかな…
私は自分の事のようにホッとした。