シンデレラは騙されない


星矢君は玄関の方へ行き、誰も帰ってくる気配がないか確かめに行く。

その様子を見かけたもう一人のお手伝いさんの清水さんが、あれ?という顔をする。

「清水さん、今から凛太朗に電話するからシー」

どうやらこの状況はよくある事らしい。
清水さんも星矢君に合わせてシーと指を口に当てて笑った。

星矢君は慣れた手つきで家の電話から凛様に電話をかける。

「凛太朗の前の携帯の番号は、僕は覚えてたんだけど、また、新しいのに変わっちゃったんだ。
だから、早く覚えなきゃ」

でも、五分後には星矢君の目には涙が溢れていた。
それは凛様が電話に出ないせい。
何だか私まで泣きそうになる。

「星矢君、大丈夫だよ。
凛様はこれが星矢君からの電話だってちゃんと分かってるから、しばらくしたらここに電話がある。
それか、今晩、帰ってくるかもしれない。
だから、元気を出して」

私はそう言って、星矢君のホッぺをくにゅくにゅとした。
すると、玄関の方で音がした。
どうやら会長がお帰りになったようで、清水さんが慌てて動き出す。



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