シンデレラは騙されない


凛様の前髪がまつ毛にかかっているのがどうしても気になって、私はそっとその前髪を横に流した。
すると、仰向けで寝ていた凛様が、ゆっくりと私の方へ体を向ける。
凛様のそんな些細な動きだけで、私の心臓は飛び出しそう。

私は小さく息を吐き心を落ち着かせて、また凛様の寝顔を見る。

「……麻里?」

目を閉じたままの凛様の口がゆっくりと開いた。
麻里って呼んだ?
山本さんが言ってたように、凛様のハスキーな声は私を甘い世界へ誘う。

「り、凛様、大丈夫ですか…?」

凛様の瞳がようやく開いた。
そのとろんとした瞳は、今の星矢君にそっくりな幼くて無防備な瞳だった。
私の胸はキュンどころか、壊れ始める。
凛様の寝起きの顔が可愛すぎて、息ができないくらい…

「大丈夫じゃない…よ」

凛様はそう言って、私の右手を握りしめる。

「大丈夫じゃないから…
ここに来て…」

凛様は毛布を少しだけ持ち上げて、私の入るスペースを作ってるみたい。



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