シンデレラは騙されない


「ほら…」

「え?」

凛様は握っていた私の手を自分の体に引き寄せる。

「ここに来て…」

凛様はそんな風に言っているけど、目はまた閉じ始めた。

きっと、寝ぼけてる…
きっと、寝ぼけてる…

私は自分の心をそう説き伏せて、ご主人様の言う通りにする事にした。

自分の意思じゃない…
凛様にお願いされたから…

私は目を閉じたまま微笑んでいる凛様の隣に寝転んだ。
床の上は、思いの外、温かい。
凛様の曲線を描いている瞳は、閉じたまま何を感じているのだろう。
そんな事を考えて、凛様の隣でもじもじしていると、凛様は私の体を抱き寄せた。

「麻里はジャックのものじゃない…」

ほら、やっぱり寝ぼけてる。
私は可笑しくて凛様の胸の中でクスッと笑った。

「私は誰のものでもありません…」

私がそう囁くと、凛様はまたゆっくりと目を開ける。
私は凛様が完璧に起きたと思い、慌てて毛布から飛び出した。
凛様はそれでも手を離さない。

「麻里はもう俺のものだよ…
だって、こんな風に、俺の前に現れたんだから…」





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