私は強くない
番外編

ライバル?

「圭輔さん、起きて?」

私を後ろから抱きしめて寝ていた、圭輔さんを起こした。

「ん、まだもうちょっと…」

もうちょっと、と言いながら圭輔さんは、私の体を抱きしめていた手を、さらに強めた。そして顔を近づけ、首元にキスをしてきた。

「圭輔さん!起きてるでしょ?」

「起きてるけど、もう少しこうしていたい…」

もう。
圭輔さんと、同棲して3カ月が過ぎた。
毎朝この感じ。
慣れたと言えば、慣れた。
だけど、この後の甘い時間は慣れようがなかった。

圭輔さんは、私を翻弄する。

これが仕事じゃ、人をまとめてる人なのか?と思う程に…

「少しだけですよ?」

そう言って、圭輔さんにキスをした。

いつもの私達の朝が始まった。




「だから言ったじゃないですか!」

「慶都も悪いだろう?あんな事してくるんだから…」

「そ、そんな。最初に始めたのは圭輔さんでしょ?」

このくだりも毎朝…、飽きないよね?

「慶都さん、毎朝同じことしてませんか?」

「あ、美波。おはよう」

「倉橋課長、おはようございます」

呆れた顔で私を課長と呼び直したのは、来月寿退社する美波だった。

「はたから見るとバカップルですよ、課長」

「ひ、ひどい。まだ半年なんだから、許してよ」

「まぁ、ラブラブですもんねー」

「自分だって、金谷君と来月結婚式じゃない。幸せ真っ只中でしょ」

「バカップルとは違いますよ」

「もう!」

そんな感じで1日が始まっていた。

「倉橋!ちょっといいか?」

人事部の都築部長に声をかけられた。

「どうかしましたか?部長」

「ま、ここに座ってくれ。すまんな、来月で木村も退職だろ。人事部が欠員出るんだがな…」

座れと言われ、橋本君が入れてくれたコーヒーを飲みながら話を聞いていた。
なんだか、嫌な予感はしていたんだけど…

「まさか、ですよね?」

「いやぁ、そのまさか、なんだよ。課長として営業部に行ったのに、申し訳ないんだけどな、もうすぐ名取と結婚するんだろ?」

飲んでいたコーヒーを吹き出した。

「ぶ、部長?な、なにを急に…」

慌てて、ポケットからハンカチを出して口や机を拭いた。

「いや、名取がそろそろ、って言ってたからな、さすがに夫婦で同じ職場はまずいだろ。そういう決まりになってるしな。元々いたお前が戻ってくれると助かるんだよ」

「は、はぁ」

釈然としないまま、都築部長から考えていてくれと言われて営業部に戻ってきた。
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