私は強くない
「慶都…」

「心配かけるような事して、ごめんなさい。ほんとに何もないの、蒼井とは。私が好きなのは、圭輔さんだけだから…、信じて…」

どれくらいの時間が経ったのか、圭輔さんが、体を離した。

「いい男がみっともないよな、ヤキモチなんか」

「ふふふ、私は嬉しかったよ。最初蒼井が帰ってくるって話した時、関心ないようだったから、そんなものなのかな、って思ってたの」

「…そうか、俺なりに理解ある男になろうとしてたんだけどな…」

「圭輔さん…、そんな所で物わかりの良い人にならないで…」

会社だって事を忘れて、二人で語り合っていた。

♪♪♪♪♪♪♪

「あ、ごめんなさい。私のだ…」

携帯が鳴り、ポケットから携帯を出した。誰からなのか、ディスプレイには蒼井と表示されていた。

私が出るのを躊躇していると、圭輔さんが、出ろと合図をしてきた。

なんとなく気が引けたが、出ないと出るまでかかってくるであろう、その電話に出た。

「もしもし」

「倉橋か?さっき言ってた飯なんだけど、同期のヤツ数人に声かけたんだ。行くって言ってるから、お前も来るだろ?」

「え、あの、私無理なんだけど…」

「え!なんでだよ!せっかくだし、いいじゃねーか!」

電話口で大きな声で話され、耳がガンガンとしてきた。少し電話を離して話していると、圭輔さんがその電話を奪った。

「あっ…」

「もしもし、蒼井か?名取だ」

「え?あ、名取部長…なんで…」

「悪いな、倉橋は行けない。俺と営業先に行く予定なんだ。分かったか?」

「あ、は、はい。じゃ、失礼します」

「はい、今日はこれで大丈夫だろ」

「…ご、ごめんなさい…」

「なんで謝る?俺としては、俺のオンナに手を出すな、ぐらいは言いたいけどな。まだ公になってないから言いづらいだろ?これぐらいは部長特権使わせてくれよ」

「……圭輔さん…」

私はまた圭輔さんに抱きついていた。


「おいおい、会社だぞ、俺は全然いいけど?」

「もう!」

二人で笑い合った。
よかった、誤解は解けたみたい…

そう思っていた。
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