私は強くない
「…で、ヤキモチやっぱり焼かれたんですね?」

「……はい、そうです」

私はまた美波に電話していた。

「でも、蒼井さん要注意じゃないですか?もう名取部長と婚約してます、って言った方がいいですよ?慶都さん」

「そうなのかな…」

「当たり前じゃないですか!それだけグイグイ来られたら、負けるでしょ!慶都さん、流されやすいから」

「うっ…」

どっちが年上なんだか…
でも、美波の言うように、来週から蒼井が出てくるって事は、私も付きっ切りで指導に当たる訳だし。

「やっぱり、蒼井にはちゃんと言うよ」

「そうですよ!絶対、名取部長と一緒ですよ?二人っきりは危険ですよ!分かってます?」

「圭輔さんも一緒に?どうして…」

「そんなの蒼井さんでしょ?奥菜がやっといなくなったと思ったら今度は、名取部長に取られたと思ったら、何するか分かりませんよ?」

「そ、そんな…」

「蒼井さん、あぁ見えて結構強引じゃないですか?慶都さん負けますって」

「…そうなのかな、分かった。圭輔さんに相談する」

「なんかあったら言って下さいね。陽一も心配してましたよ。慶都さん人がいいからって…」

「うっ…」

ほんと、どっちが年上なんだか分からないや。
美波との電話を終えた私は、圭輔さんにどう話をしようか迷っていた。
ある程度の事は、いつも自分で決めてきた。でも、これだけは答えが出せないでいた。

美波が言うように、蒼井は強引な所がある。私がまだ営業部で蒼井と一緒にやってた時も、強引に仕事を進めた事があった。
相手に考える隙を与えず、押していく。蒼井のやり方は、強引だけど、納得させられるものをもっていた。
あれでこられたら、と思うと私は太刀打ち出来ないだろうか?

美波に言われて、そうなのかもと思い始めていた。

そして、蒼井が東京本社に戻ってきた。
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