私は強くない
「ど、どうしたの。急に…」

「いや、あれから…名取部長が家に来たんだ…」

「え?け、圭輔さんが?」

「あぁ、頭下げに来た。自分とは別れるから、と。それがお前が望むならそうすると、ただお前も倉橋には手を出すな、って。それで倉橋を解放してやってくれって。自分と俺以外の男が幸せにするなら問題ないだろ?って」

「そ、そんなめちゃくち…」

めちゃくちゃと言いかけて、自分が言ったんだと思い出した。
そうだ、私が結婚止めるって言ったから…
そこまで圭輔さんを傷つけたなんて…私はまた泣いてしまった。

「やっぱり、なんかあったんだろ?名取部長は、俺が納得するまで帰らなかったからさ、ほんとに倉橋の事好きなんだよな。よく分かったよ。自分の事より、倉橋の幸せしか考えていないんだぜ?考えられないよ。普通」

「…私が言い出した事なの、蒼井を傷つけてまでしたくないって…」

「そっか、俺も倉橋しか見えてなかったから、昨日あんなに荒れて悪かったよ。あの名取部長なら負けても仕方ない、って思えたよ。あんなに俺は倉橋を思えてなかったからさ。それが言いたくてさ、傷つけてゴメンな。」

私は首を振った。
蒼井が悪いんじゃない、はっきりしなかった私が悪いんだ。
圭輔さんまで傷つけて…

「け、圭輔さんって、それからどうしたの?帰ったの?」

「俺が倉橋の事は諦めたって言ったら、帰るって帰って行ったけど、家に戻ってないのか?」

「うん、帰ってきてないの…電話しても繋がらないの…っ、うっ…」

こんな私の元に帰りたくなかったんだろう。
どこに行ったの、圭輔さん。
会ったら、いっぱい謝らなきゃ、ごめんなさいって。

テーブルに手をつき、泣き続ける私に、蒼井は手を伸ばそうとした。

「それは、俺の役目だから、慶都に触るな」

圭輔さんが前に立っていた。
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