私は強くない
どれくらいの時間が経ったんだろう、気がつくと私は圭輔さんの腕の中で眠ってしまっていた。

「…圭輔さん、私…」

「慶都、よく眠ってたな…」

優しく私の髪を撫でながら、圭輔さんはゆっくり話始めた。

「ごめんな、慶都。本気で結婚をやめようなんて、俺は考えてなかったんだ。ただ、蒼井が俺がそばにいる事で、慶都を諦める事に納得がいかないって言うなら、一旦離れる事も大事なのかなって思ったんだ。何があっても離れないって、自信はあったんだがな、蒼井があんな感じじゃ、どうしようもないな、って。離れても守る事は出来るから…様子を見ようと考えたんだ。慶都自身も、辛かったろ?」

「……ごめんなさい、私が結婚止めるって言ったから…」

「それは違う。蒼井を黙らせたかったんだ。だから、頭を下げた。俺も引くからお前も手を出すな、って。蒼井もあそこまでしたら、無理だって分かったみたいでさ」

蒼井も圭輔さんの気迫には負けたみたい。
もっと私が、蒼井に対してその気がない事をはっきり言っておくべきだった、と思った。
でも、圭輔さんが話をしてくれたから、蒼井も納得してくれた。

圭輔さんの首元に腕を回し、顔を見上げた。

「圭輔さん…ずっと一緒にいて下さいね」

「どこにも行かないよ。慶都こそ、逃げんなよ?」

「…バカッ…」

幸せな時間が戻った瞬間だった。



あれから、圭輔さんに昨日はどこに泊まっていたのかを聞くと、近くのビジネスホテルに泊まったらしい。
若くもないから、ネットカフェに泊まるのは出来なかった、と。
私が心配してるだろうから、帰ろうとしたけれど、どんな顔をして会えばいいのか分からなかったって。
私の方こそ、圭輔さんに会わせる顔がなかったっていうのに…


でも、圭輔さんが動いてくれなかったら、まだ蒼井との事は平行線のままだったと思うと、圭輔さんの大きさが伝わってきていた。

「ありがとう…」
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