家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました

「まあ、来てしまったからには仕方ないだろう。夕食はここでいただくことにしよう。チェルシー、テーブル席は空いているか?」

「え? あ、もうすぐ空きます。少々お待ちください」

家族連れの泊り客が食べ終わったので、チェルシーはそっちにテーブルを整えるために向かった。
ザックの言動を鑑みるに、ザックが昼間言っていた合わせたい人とは祖父のことなのだろう。

ロザリーは心を決めた。食事までしていく以上、その間ずっと隠れているなんて不可能だ。ロザリーは足手まといになるためにここで働いているわけではない。見つかったら見つかったで仕方ないではないか。

立ち上がり、再び洗い物を始める。

「ロザリ……」

「しっ、彼女は仕事中です。邪魔をしてはいけませんよ」

祖父はロザリーに気づき、声をかけようとしたが、ザックが止めてくれた。
心の中で感謝をし、平然を装って洗い物を続ける。

しかし、目ざといレイモンドはロザリーの変化を見逃さなかった。

「ロザリー、もしかしてあのご老人は知り合いか?」

窓際の奥の席に案内された祖父は、庶民の店である切り株亭の内装をうさん臭そうに眺めている。
ロザリーは迷った。男爵令嬢であることは、ザックとケネスしか知らない。貴族の子女だということが本当にバレたら、レイモンドに解雇されてしまうのではないかと不安だ。
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