独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
彼が羽野チーフを呼び捨てにしたことに少しだけ胸が軋む。ふたりの仲の良さ、過ごしてきた時間の長さが羨ましいと思ってしまった。
そんなことを考えてしまう私は何て狭量な心の持ち主なのだろう。

でもちょっと待って。今、彼はなんて言った? 羽野チーフに婚約者がいるって言った?

「羽野チーフの婚約者? 煌生さんじゃなくて?」
瞬きをしながら聞き返す私に、彼がフッと優しく笑んだ。

「そう、アイツの婚約者。来年六月に挙式予定の」
「ほ、本当に? だったらどうして、あの日一緒にいたの……?」

自分でも思った以上に大きな声が出た。身勝手な追及だとわかっていても尋ねずにはいられなかった。彼に詰め寄って確認する。

「あれはたまたまアイツと新規の取引先に寄った帰り道だったんだ。ハーモニーガーデンが提供するサービスにはホテルや旅行会社等との提携プランもあるから。美玖は各取引先との橋渡しの一端を引き受けているんだ」
彼の説明に不自然さは感じられなかった。
なぜならその提携プランについては以前ハーモニーガーデンを手伝った時に教えられていたものだったし、自分自身でも学習したものだったから。

「その日は人手不足解消のために採用されたスタッフの歓迎会をする予定だった。けれど予約していた店の事情で急遽キャンセルになってしまったんだ。それで正式なものは後日にしてハーモニーガーデンでささやかな歓迎会を開くことになったんだよ」
彼は真摯な目で私に訴える。

「車で来ていたから、美玖に頼まれて飲み物や食べ物を、たまたま通りかかったあのスーパーマーケットで買い出ししていたんだ。言っておくけど、ふたりきりじゃない。スーパーマーケットを出た先に柿元が待機していたから」
 
< 117 / 158 >

この作品をシェア

pagetop