独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
それじゃ、あの日のことは本当になんでもないことだったの? 私の勘違い?

心の中に温かいものが拡がっていく。同時に自分の失態と早とちりに泣きたくなる。

「でも、あんなに顔を寄せ合って話してた……」
疑い深く、まだ私は彼に尋ねてしまう。どうせなら気になることをすべて聞いてしまいたい。

「あれは不躾にスマートフォンのカメラを向けてくる人間がいたから。美玖だけでも撮らせないようにしたかったんだ。これ以上、迷惑をかけるのはさすがにアイツの婚約者に申し訳ないからな」
彼の返事に記憶を必死で手繰り寄せる。そう言えば彼らの周囲には大勢の人がいた。

「本当に……?」
言いたいことはたくさんあるのに、同じような言葉しか口にできなかった。呆然とする私を見て、彼は大きく頷く。

「俺は橙花に嘘はつかない。信じられないなら、美玖と柿元に今から電話して直接聞くか?」
言うが早いか、彼はスーツの内側のポケットからスマートフォンを取り出す。

「い、いいです!」
慌ててスマートフォンを持つ彼の右手をつかんで止める。いきなり羽野チーフや柿元さんに電話して何を話せばいいのかわからない。ふたりとも驚くだろう。
本当にどうしてこの人はこんなにも突拍子のないことばかりをしようとするのだろう。まったく予想がつかない。

彼は私の様子を見て、少しホッとしたような表情で微笑む。
「アイツ、この週刊誌の記事にかなり怒っていたからな。俺も被害者だっていうのに、本社まで乗り込んできて俺に罵詈雑言を浴びせてきた。破談になったらどうしてくれるんだって。もちろん記事をだした出版社に訂正記事を出すように訴えてやるって息巻いていた」
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