独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
突然の設楽一家の姿に私は一瞬、声を失う。それから慌てて頭を下げた。

「ご、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。は、はじめまして、都筑橙花と申します」
どうしよう、こんなに突然社長夫妻と面会だなんて。私、泣きすぎて化粧も落ちてしまっているし、きっと散々な顔をしているに違いないのに!

緊張で身体が強張ってしまう。下げた頭を上げられない。

「橙花さん、頭を上げてください」
社長が優しい声音で私に話しかけた。私は恐る恐る顔を上げる。

「橙花、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
平然と言う彼がなんだか恨めしい。

「やっと息子の婚約者にお会いできた。はじめまして、煌生の父です。こちらは妻です」
社長はとても丁寧に私に挨拶をしてくれた。社長の目尻にうっすら刻まれた皺が優しい印象を与える。

「まあ、本当に可愛らしい方ね! はじめまして、煌生の母です。橙花さんってお呼びしてもかまわないかしら?」
ニコニコと微笑む夫人はとても綺麗な人で煌生さんに目元がよく似ている。精悍な顔立ちの社長に寄り添うふたりの姿はとても仲睦まじく見える。

「は、はいっ」
「お会いできるのを楽しみにしていたの。この子ったら全然あなたに会わせてくれないんですもの。傲慢で自分勝手な息子だけでどうぞよろしくね」
とても嬉しそうに言われ、私は戸惑う。反対されても困ってしまうけれど、ここまで手放しで受け入れて喜ばれることにも困惑してしまう。

「酷い言われようだな……どうした、橙花?」
私の様子に気づいた煌生さんが声をかける。

「反対されなくて戸惑ってる、とか?」
まさに私が考えていたことを大輝さんが口にする。

その質問にビクッと肩が小さく跳ねる。恐る恐る頷く私に煌生さんが苦笑する。
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