独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
「もうっ、大輝くん。橙花ちゃんをいじめないで」
姉がぴしゃりと言い放つ。

その瞬間、大輝さんが困ったような表情をする。その表情はどこかあどけない。こんなつかみどころのない人にそんな表情をさせてしまう姉はやはりすごい。

「いや、そんなつもりじゃ……まいったな。そう、俺は最初から気づいてた。あなたは兄の好みのタイプではないし、ふたりの距離感は不自然なのに受け答えや所作が完璧すぎるからね。それにどこかの令嬢とも思えない」
きっぱりと彼が言う。その言葉に心臓を鷲掴みにされたような気がした。握りしめた手が急激に冷えていく。

「大輝くん‼」
姉が珍しく声を荒げて彼の名前を呼ぶ。

ほらやっぱり。だから絶対に無理だって言ったのに。
心細くなって泣きたくなる。こんなこと初めから無謀だってわかったいたのに。分不相応な夢を見たからこんなことになるんだ。

どうしよう、この人にばらされたら副社長が窮地に陥ってしまう。結果的に彼の家族を騙してしまったのだから損害賠償や慰謝料を請求されたりはしないだろうか。会社は退職しなければいけないだろう。両親になんて説明したらよいのだろう。

顔からどんどん血の気が引いていく。自業自得だというのに、この期に及んで泣き叫んでしまいそうなみっともない私がいる。

「あ、謝って済む問題ではないのはわかっています。申し訳ありませんでした。あなたのご両親を騙したいとか、会社に迷惑をかけるとかそういうつもりはなかったんです」
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