結婚願望のない男


山神さんのメールで少し気を持ち直した私は、全体スケジュールと予算案を丁寧に修正した。一方、香川さんからたくさん要望をもらっていた調査票は、島崎くんが多忙すぎて、打ち合わせの当日まで仕上がってこなかった。

「島崎くん…、これ…」

昨日の晩も島崎くんは別件で手いっぱいで、全然会話ができなかった。彼が『明日の朝までには仕上げます!』と言うから仕方なく帰ったけれど、朝来てみると調査票のファイルの送信時刻は深夜2時を過ぎていた。

「こんな遅くまでやってたの?終電間に合わないぐらいなら言ってくれれば手伝ったのに…!」

「女の子に遅くまで残業させるわけにはいかないでしょう?夜道は危ないですし。このぐらい平気ですよ」と、まったく平気ではなさそうな、眠そうな目で島崎くんが言う。

「そうだけど…」

ざっと見たところ、やっぱり急いで作ったものという感じで調査票案には粗が目立つ。表現のわかりにくい選択肢があったり、質問項目の順番を変えたほうがいいかもと思うところがあったり…。ただ、いずれも熟考しなければすぐに修正はできなさそうだ。
いつもの島崎くんならもっとスマートに出来の良いものを出せたはずだけれど…正直、らしくない出来だった。

(ゆっくり手直ししたいけど時間がない…。まぁ、どうせまた香川さんの考え次第でひっくり返ってしまいそうな部分も多いし、後追い修正でも大丈夫かな…)

やや気おくれするけれど、時間もないので明らかな誤字脱字のみを修正して、会議に臨むことにした。
< 49 / 78 >

この作品をシェア

pagetop