アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
なにしろこんな風に女の子を連れて歩いて一番困るのは、恋愛感情を持ち出されることだが、その点飛香にはそんな心配も全くなかった。

恋する乙女の視線を浴び続けた洸には、それがわかる。
飛香の場合は、こんな風に世話を焼いてもただ感謝されるだけ。安全安心である。

「碧斗は、なんだかんだとうるさいだろう?」
そう言うと、目を細めてクスクスと飛香が笑う。

「私があまりに何もできなくて、危なっかしいから。本当に優しい兄です」

「ふぅん。でも君は十分自立した大人じゃないか」

散々子ども扱いしているくせにどの口が言う? 心の中で自分に軽い突っ込みを入れながら、洸はぬけぬけとそう言ってみた。

飛香はと言えば、あくまでも兄を悪者にする気はないらしい。
クスっと笑って、肩をすくめる。
「はい。すみません、いい大人なのにいつまでも子供っぽくて」

どこまでも、兄を悪者にする気はないらしい。

――シスコンとブラコンね。

幸せなことだ。

半分皮肉で半分は本気ともとれる薄い笑みを、洸は口元に浮かべながらコーヒーを飲んだ。
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