アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「どうしましょう。私はこのまま邸に帰りますが、車は残しますか? あのお嬢さまも疲れているかもしれませんし」

「そうして」

「わかりました。車は高藤が来ています。では、御用があればいつでもお呼びください」

軽く頭をさげ、アラキは博物館を後にした。

アラキがここにいたのはほんの十分程度。

結果的には電話で済む話しかしていないが、一体何をしに来たんだと、洸は思わない。

こうなることを予想したアラキが、車で迎えに来たに違いないからだ。でも彼は飛香の電話を耳にした時方針を変えたのだろう。

洸にはそれがわかる。
それは幼い頃からの信頼からなる阿吽の呼吸ともいっていい。

アラキを見送った洸は腕を組むと、あらためて飛香の電話を思い返した。

可哀そうに、と思う。
洸には兄を庇い、兄には洸を庇う。

そのどちらにも悪いのは自分だと健気に訴える飛香は、記憶を無くして心細い思いをしている女の子だ。その子に対して、子守りは疲れると突き放せるほど、洸とて冷血な人間ではない。

それに、兄と電話で話す飛香は、洸が知る何もわからない子供ではなかった。
ちゃんと気づいていた……。
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