アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
あの曲は、平安の都で兄の蒼絃が朱鳥のために作ってくれた曲だった。

強いていうならば『朱鳥』であるが、今それを言っても説明できるものではない。

「わかりません」と、小さく答えた。

チラリと上目遣いで見上げれば、洸はいつものように微かな微笑みを浮かべて見返した。

『飛香は、なにもわからない子供でいればいい。
記憶を失っていることになっているから、会話に困るような時は、目についたわからない物について質問すればいいだろう』

兄はそう言ったが……。

――でも、お兄さま。この人は感性が豊かで、とても勘が鋭いわ。

かつてない不安が飛香の心に湧き上がった。

『このガラスをすり抜けて、向こうの世界に行ってしまいそうに見えた』
そんなことを言われたからかもしれない。

見つめられていると、全てを見透かされそうで怖くなる。
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