アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
――お願い。どうかそれ以上興味を持たないで。

飛香はそう願いながら、指先を動かして弾くふりをしてみせた。

「なんとなく記憶にあるとおり、指が動くまま」
それから肩をすくめ、少し困ったようににんまりと笑う。

誤魔化すにはこうするのが一番だと身につけた仕草は、兄も太鼓判付きだ。ただの無邪気な笑顔に見えるはず。そう自分に言い聞かせた。

――大丈夫、この人は私に関心があるわけじゃない。

不安を消し去るように飛香は目の前の膳に集中した。

見た目も美しくおいしい料理は、たとえそれがほんのひと時でも全てを忘れさせてくれる。これは平安の都にいた頃から変わらないことだ。

凝った盛り付けの中から、花の形に切られた人参に箸を伸ばした時には、案の定もう洸の存在が気にならなくなっていた。
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