アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
ため息をつきながら、洸は箸を手に取った。

味を感じることもなく食事を口に運ぶ。

そんな洸を見守りつつポツリとアラキが言った。

「それにしても平安時代にいるという朱鳥姫は、今頃どうしているんでしょうね。頭中将とは知り合っているはずなのに」

「ーー頭中将? ちょっと待って、アラキはいったいどこまで知ってるの?」

「え? えーっと、今の飛香さんは平安時代で朱鳥姫だった。そして洸さまは頭中将だったということ。あとは、偶然朱鳥姫と頭中将は顔を合わせたことがあるとか、なんとか。そんなことでしょうか」

ーー千年前の自分を、飛香が知っている?

「飛香さんから、何も聞いていなかったのですか?」

「聞いてない……というか、飛香から平安時代の話を聞いたことはないんだ」

ーー何故なら、飛香はその時代に帰ってしまうかもしれないからだ。そんな事実は認めたくなかったし忘れたかった。

碧斗からだけじゃなくて、飛香から直接話を聞いておけばよかった。
その話から逃げないで、もっとちゃんと向き合っていれば。
唇を噛んで少し考え込んだ洸は、次の瞬間ハッとしたように立ち上がった。

「ちょっと出かけてくる」
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