アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
『ごめんなさい。これから十月までひとりになりたいんです。そのあと連絡します。それまで待ってくれますか?』
一週間前洸にそう言った時、飛香は居ても立っても居られない心理状況にあった。

結果的には単なる早とちりだったが、妊娠したかもしれないと思っていたからだ。借り物の体なのにどうしよう、泣いて済む問題じゃないとただただ申し訳なさで押しつぶされそうになっていた。

それでもあの夜のことを後悔はしたくはなかったし、洸を恨む気持ちは微塵もなかったが、自分のことだけは責め続けた。勘違いだとわかってからも、ずっと。

本当は西園寺家での仕事を辞めたくはなかった。この先アスカと話し合うまでのひと月の間、洸とふたりきりにはなれなくてもせめて、西園寺邸で彼の温もりを感じていたかった。
でも、お昼休みに洸が帰って来た時、その笑顔を見て、このままじゃだめだと思った。いつまた自分を見失ってしまうかもしれないと。

辛さに耐えながら絞るように出した結論は、辞めることだった。
西園寺邸にいる間はずっと涙を堪えていたこともあって、家に帰った途端たがが外れたように涙が溢れ出たのである。
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