アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
――飛香?

碧斗は妹とゆっくり話をする時間もなかった。

碧斗自身の仕事が忙しかったこともある。
時折、青銅の鏡を通して現代に来ていた蒼絃も、十月の二人のアスカの再会に向けて力を温存する必要があり、ここしばらく碧斗の体に入ってくることはなかった。

より不思議な力を持つ蒼絃なら、飛香の変化に何か気づいたかもしれない。
でも碧斗は、飛香がすっかり現代での生活に慣れてきていると安心していたこともあって、気づいてあげることができなかった。

そんな事情はさておき碧斗は慌てて考えた。
ーー飛香が泣く理由……洸?

「何があったんだ?」

「ご飯の用意、しますね」

「ちょっと待って飛香。話をしよう。ここに座って」
椅子を引いて座るよう促した。

涙を拭いながら、ゆっくりと飛香が座る。

そんな妹を前に、碧斗は高速で記憶を呼び戻した。
洸が送ってきたあの日、叱ったこともあって飛香はしゅんとしていたが、落ち込んではいなかった。

――まさかと思うが、洸と何かあったのか?

碧斗はハッとした。
実は洸以上に恋愛というものに関心のないこの男は、妹の心の動きに気づいていなかった。碧斗にとって、飛香はどこまでも可愛らしい子供のままの妹なのである。

「お前、もしかして……」

――あの日、洸と一晩を共にしたということはそういうことなのか?
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