アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
食事がひと通り終わった頃、リビングにある電話が鳴った。

「奥さま、ちょっとよろしいですか?」
サワが電話の子機を渡す。かかってきた電話は西園寺夫人へのものだった。

「ごめんなさいね。飛香ちゃん、気にしないでゆっくりしてて」
そう声をかけた夫人は、足早にダイニングの一角から繋がるリビングの方へと向かい、
洸と飛香はふたりきりになった。

夫人の背中を見送り、話し相手を失った飛香は、テーブルに目を落とす。

皿の上にはデザートの小さなケーキとフルーツが艶やかに盛り付けられている。
まるで同じテーブルについている人間がいることなど忘れているように、飛香は瞳を輝かせて、フォークを手にとった。

完全に自分の世界に入っているその様子を、洸は珍しいものでも見るようにしげしげと眺めた。

上から見たり横から見たり、まじまじと皿の上を観察すると、そっとフォークをいれ小さなひと口を、瞼を閉じて味わう。

飲みこむと同時に感動を隠そうともせず大きく目を見開いて、またケーキを見つめる。

この子は一体、いつになったらここにもう一人いることを思い出すのだろう? そんなことを思いながら洸は頬杖をついて観察し続けた。

皿の上から何もなくなった時だ。
フォークを皿に置いた飛香は、ようやく洸の視線に気づき、一瞬目を見開いて真っ赤になった。
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