アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
あらためてよく見ると、斜向かいの席に座っているこの女の子はすぐにでも席を立ちたいほどそわそわしている。

その証拠に、唇を固く結んだまま俯いて、時折そっと腕時計を覗き見ているではないか。
そこには、打ち解けようとする努力さえ感じられない。

――なぜだ?

子供の頃から、洸はいつだって女性たちのうっとりと潤んだ瞳に見つめられていた。
誰もが自分に恋をするなどとうぬぼれているわけではないが、理由もなく嫌われることはないと思っている。

物心ついた時から『女性にはあらんかぎり優しく接しなさい!』と母から厳しく言われ続けたのだ。おかげで自然と身についたレディーファーストの精神。それによって、好意を持っていると勘違いされることこそあるが、一方的に避けられた経験など皆無に等しい。

それなのに。
――どうしろと?

つい、煽るようにグラスに残ったワインを飲み干した時だった。

「あの、百人一首はお好きですか?」と、か細い声が言う。
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