アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
――まったく。

こうなると、反論するだけ無駄だ。

西園寺家で一番強いのは母である。次はサワかもしれない。
西園寺家の主である父も彼女たちには敵わない。
執事のアラキなら上手くかわすことができるかもしれないが、彼は今、洸の父と一緒にニューヨークにいる。

「お願いしますね、坊ちゃん」

サワにまで念を押された。
これはもう、あきらめるしかないと洸はため息をついた。

――やれやれ。

それからまもなく夫人は邸を出た。

軽くシャワーで汗を流し、気を取り直してダイニングルームの扉を開けると、そこに待っていたのはちょこんと座っている飛香だ。

ふたりきりの夕食である。

静寂を破ることなく、いつものように穏やかに流れるクラシック。
テーブルを挟んでふたりは向き合って座っているが、いつものようにふたりの間に会話はない。
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