一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

それはまさしく恋人のそれだった。偽恋人を演じている、というレベルを軽く越している。2時間インタビューをして私の話を聞かされた松井さんに拍手だ。


(まさか、本当に私のことを好きだったの…?)


「美香ちゃん。」


如月さんが、静かに私の名を呼んだ。はっ!として顔を上げると、穏やかな瞳の彼と目が合う。


「なんで、樹は一度オーケーを出したこの記事を差し止めることにしたんだろうね。」


「…!」


『私のこと、抱いてないくせに…!』


昨夜、彼に浴びせてしまった言葉が蘇った。

ひどい暴言だ。彼の気遣いを、無下にした。我慢させたのは私なのに。


「…大丈夫。樹は、今さら何があったって君のことを嫌いになったりしない。」


「!」


「行っておいで、美香ちゃん。君は、クールで仕事人間の樹が、唯一胸に飛び込むことを許した女の子なんだから。」


にこり、と微笑んだ如月さんは、ぐっ、と伸びをして記者の彼に声をかける。


「松井さん。わざわざ来てくれて申し訳ないけど、インタビューはナシにしよう。」


「え?」


「だって、その記事は差し替える必要がないんだから。」


でしょ?、と笑った彼は、私にぱちり、とウインクした。

ぎゅうっ!と雑誌を胸に抱きしめた私は、こくり、と頷き、松井さんに尋ねる。


「あの、このサンプル、頂いてもいいですか…?」


「えぇ、構いません。出来れば、久我さんに直接、印刷の許可を交渉していただけるとありがたいのですが。」


さすが、人気週刊誌の記者だ。事情を察したように、にこり、と笑う。


今日、仕事が終わったら確かめよう。樹さんに、直接。

はっきり伝えるんだ。私の想いも、全部。


(だけど…その前に……)


私は、深く息を吐いて、“彼”へと一通のLINEを送ったのだった。

< 122 / 186 >

この作品をシェア

pagetop