一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
それはまさしく恋人のそれだった。偽恋人を演じている、というレベルを軽く越している。2時間インタビューをして私の話を聞かされた松井さんに拍手だ。
(まさか、本当に私のことを好きだったの…?)
「美香ちゃん。」
如月さんが、静かに私の名を呼んだ。はっ!として顔を上げると、穏やかな瞳の彼と目が合う。
「なんで、樹は一度オーケーを出したこの記事を差し止めることにしたんだろうね。」
「…!」
『私のこと、抱いてないくせに…!』
昨夜、彼に浴びせてしまった言葉が蘇った。
ひどい暴言だ。彼の気遣いを、無下にした。我慢させたのは私なのに。
「…大丈夫。樹は、今さら何があったって君のことを嫌いになったりしない。」
「!」
「行っておいで、美香ちゃん。君は、クールで仕事人間の樹が、唯一胸に飛び込むことを許した女の子なんだから。」
にこり、と微笑んだ如月さんは、ぐっ、と伸びをして記者の彼に声をかける。
「松井さん。わざわざ来てくれて申し訳ないけど、インタビューはナシにしよう。」
「え?」
「だって、その記事は差し替える必要がないんだから。」
でしょ?、と笑った彼は、私にぱちり、とウインクした。
ぎゅうっ!と雑誌を胸に抱きしめた私は、こくり、と頷き、松井さんに尋ねる。
「あの、このサンプル、頂いてもいいですか…?」
「えぇ、構いません。出来れば、久我さんに直接、印刷の許可を交渉していただけるとありがたいのですが。」
さすが、人気週刊誌の記者だ。事情を察したように、にこり、と笑う。
今日、仕事が終わったら確かめよう。樹さんに、直接。
はっきり伝えるんだ。私の想いも、全部。
(だけど…その前に……)
私は、深く息を吐いて、“彼”へと一通のLINEを送ったのだった。