一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
彼の放った一言に、私も動揺が隠せない。
社長…?
それはつまり、久我ホールディングスのトップであり、とんでもなく偉い人で…
椿を送り込んで私たちを別れさせようとした、樹さんのお父様、ってこと…?
「会食はどうした。場所は伝えたはずだろう。」
ブレない口調に、樹さんが目を細めて答えた。
「挨拶をして抜けさせてもらいました。お見合いなど俺には必要ないので。」
お互い譲らない。明らかに怒っている様子の樹さんだが、社長もさらに眼光を鋭くして責め立てる。
「いい加減、久我を背負っている自覚を持て。お前の行動ひとつで、会社に関わるどれだけの人間の人生を左右すると思っているんだ。」
「勝手に仕組んだのはそっちだろ。お見合いだと知っていたら、俺は初めから行かなかった。」
ヒートアップしていく親子喧嘩に、私と椿は完全に蚊帳の外だ。今まで樹さんはなんども本社に呼び出されていたが、その度にこんな言い争いを繰り広げていたのだろうか。
すると、社長が、ちらり、と私を一瞥した。
一瞬見つめられただけで、ぞくりと体が震える。
“あ、今、品定めされた”
私は、明らかに社長が求める女性像ではない。きっと、後継者が付き合う彼女としてはランク外の評価だろう。
まるで、圧迫面接だ。
私から目をそらした後の社長の一挙一動が気が気でない。
…と、その時。
社長の低く冷めたような声がスイートルームに響く。
「一人前にもなっていない男が、その先に責任の持てない人生など選ぶな。…こうなったら、私にも考えがある。」
「…!」
全員が息を呑んだその時。社長は想像をはるかに上回る一言を言い放った。
「新設されるランコントルホテルのロサンゼルス支部にお前を飛ばす。三日後の航空チケットで渡米してそこの経営にあたれ。」
「「「!!」」」