一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
空気が、一瞬にして張り詰めた。
ランコントルホテルのロサンゼルス支部?それはつまり、海外転勤ということか?
樹さんが目を見開いた瞬間、黙って聞いていた椿が声を上げる。
「さすがに、やりすぎじゃないのか。」
「口出しをするつもりか?椿。…お前は自由に動いていい。こいつが心配なら、補佐にでも入ってやれ。」
何を言っても、揺らぐ気はないようだ。
言葉の出ない樹さんに、社長は表情一つ変えずに言い切った。
「フライトを蹴るようなら、二度とお前を後継者とは認めない。結果を出すまで帰ってくるな。」
(…!)
社長はそれ以上は何も語らず「椿。行くぞ。」と声をかける。
椿は何かを言いかけるが、渋々その声に従って歩き出した。彼は樹さんにちらりと目をやり、そして、すっ、と私の隣を通り過ぎる。
「泣かせてごめんね。」
「…!」
「…敗者は約束に従うから安心しなよ。」
すれ違いざまに静かにそう言った椿。彼は一度もこちらを振り返らずに部屋を出て行った。
バタン…!
二人っきりになった部屋には重い沈黙が流れた。突然の展開に動揺を隠しきれない。
(樹さんが、海外転勤…?)