一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

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「なんで引き止めないのよ、美香!」


三時。遅めの昼休憩中の屋上。

私の隣で大声をあげたのは、唯である。


「フライト、今日だよね?仕事なんかしてる場合じゃないでしょう!!」


「うん……」


「うん、じゃないのよ!うん、じゃ!!!」


相当ヒートアップしている様子の唯に、私はうつむきながら相槌を打った。

樹さんとの問題を彼と会った頃から聞いてもらってきた唯には、ここで彼の手を取らない理由が考えられないようだ。

しかし、私には覚悟がない。引き止めた先にある未来が見えずにいた。

樹さんのように流暢な英語を喋れるわけではない私は彼についていく選択肢も選べないし、家族や友人を残してアメリカに行く覚悟もない。

フライトは十七時。

便の離陸時刻までニ時間はあるものの、今さら電話をかける気にはなれなかった。

きっともう、樹さんの中では心が決まっている。


ーーコツ。


するとその時。ふいに背後から足音が聞こえた。


「…!美香ちゃん!やっと見つけた…!」


(!)


声をかけられ、はっ!と後ろを振り返ると、そこにはすっきりとした顔立ちのダテメガネの男が立っていた。


「如月さん…?!」


「久しぶりだね。」


にこりと笑って手を振る彼。目を見開く唯をよそに、私は尋ねる。


「どうしてここに…?また雑誌の取材ですか?」


すると、彼は「いや」と首を横に振って私に答える。


「樹の様子がおかしい、って桐生さんから連絡がきてね。親友のことが心配で、美香ちゃんに事情を聴きに来たんだよ。」


「え…?」


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