一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

知らないところで話題に上がっていた件を問い詰める。すると、一瞬目を見開いた彼は、わずかにまつげを伏せて呟いた。


「…樹。」


「え?」


「樹、でしょ?」


誘導尋問のように紡がれた言葉。やけに色香がある声のトーンに、どきん、とする。

ざわざわとする胸を押さえ、私はぎこちなく彼の名を呼んだ。


「樹…、さん。教えてください。」


渾身の上目遣い。

すると、満足げに、ふっ、と微笑んだ彼は、ジャケットを翻して歩き出した。


「さぁね。忘れちゃった。」


「な…っ!」


かぁっ!と赤くなる私。確信犯の笑みを浮かべる御曹司を、キッ、と睨む。

またはめられた…!

ひらひらと手を振った彼は、スイートルームの扉の向こうへ消えていく。わなわなと震える拳。やっぱり、あの人といると調子が狂う。

こんなの、毎夜続けられたら身がもたない。


「…あのいじわる御曹司…っ…!」


私は、ぼふん!とキングサイズのベッドにダイブし、彼に触れられたうなじの熱を、必死に忘れようと目を閉じたのだった。

< 38 / 186 >

この作品をシェア

pagetop