一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~
彼の重苦しい声のトーンからして、相当追い詰められていたらしい。私からしてみれば、彼が久我家と縁を切って流浪人になっていたかもしれないなんて信じられないが。
「どうして、仕事を続けることにしたんですか?」
彼は私の問いにぴくり、と肩を震わせた。
そして、数秒の沈黙の後、どこか穏やかな瞳をして小さく答える。
「スランプから抜けだせなくてどん底に陥っていた時、励ましてくれた子がいたんだ。」
「…!」
「そこの子がいたから、かな。…自分で言うのもなんだけど、ちょろい男だよ。」
思わず、ぴたり、とフォークが止まる。
…それって、女の人ですか?まさか、元カノ?
そんなセリフは口にできなかった。
ただ、あまりにも大事そうに過去を語るものだから。
それは、私のアテにならない“女の勘”でもわかるほど明確な表情だった。
(この人にも、スランプなんてあったんだ。)
テレビでも、雑誌でも、全てをスマートにこなしている印象しかなかった。
だから、何をやらせても普通以上で、生まれた時からなんでも持ってる超人だと思ってた。
しかし、彼は違う。
超人なんかじゃない。
常に求められる理想像や部下からの期待を全て背負ってプレッシャーと戦ってきた、努力の人だったんだ。