ワケあり同士による華麗なる政略結婚
ザワザワとし始めたロビーに怖くなり、入り口で立ち止まってしまった。
大勢の視線。
その中の大半は男性の視線。
自分でも血の気が引いていくのがわかる。
治ったのかもと思っていた男性恐怖症は治ってなんかいなかった。
次第に荒くなる呼吸。
そんな私の異変に気付いた男性がこちらに近づいて来た。
「どうかされましたか?もしかして体調が悪いの?医務室に連れて行ってあげようか?」
優しく微笑まれて声を掛けられたが、その男性特有の低い声に肩が上がってしまう。
でもこんな所で醜態を晒してはいけないと、必死に顔を上げる。
「わっ、顔真っ青だ。どうしたの?!ここにはどんな用事できたの?誰かに頼まれて来たんでしょ。その人呼んであげようか?」