ワケあり同士による華麗なる政略結婚


自分とは一生縁のない言葉だと思っていたが、うごめくこのドス黒い感情をそう呼ぶのだろう。










「では私はそろそろ帰ります。体調が良ければ連れ出しても構いませんが、昨日の今日ですからあまり無理はさせないであげて下さい。それと、、あの様子だと貴方には大丈夫なようですが、今回の事でフラッシュバックを起こしてまた異性を怖がるかもしれません。様子を見てあげて下さい。」

『分かりました。』

「、、あと最後にもう1つだけ、、覚悟しておいて欲しい事があります。」






真っ直ぐな視線を向けられ、こちらも真っ直ぐ視線を返した。




「、、お二人は夫婦ですから、いずれ子供を望むと思いますが心に大きな傷を抱えているあの子との子供は、、、望めないかもしれまん。美麗ちゃんのような辛い経験のある子は途中まで出来ても途中でフラッシュバックを起こすことがよくあります。そうなると最後まで行為を及ぶ事が出来ません。2人が幸せならそれでも構わないと思いますが、貴方は御曹司。必ず後継者問題になるでしょう。そうなれば辛い決断を迫られる事になるでしょうね、、。そうならない事を心から祈っています。」



そう助言を残し、主治医は部屋を出て行った。




それを見送ってから寝室に向かった。

未だ眠るあいつの横に腰を下ろし、そっと涙の痕に触れると擽ったそうに身をよじった。









これは罰か、、?

散々、女を性処理のように抱いてきた俺への戒めか?



生まれて初めて愛しいと思える女を抱くことが出来ないなんて、、。












顔に手を当てて、大きく息を吐いたのだった。







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