ワケあり同士による華麗なる政略結婚
視界が塞がるほどの大きなぬいぐるみを抱き抱え、子供のようにそのイルカを抱いたまま車に乗り込んだ。
彼から貰った初めての贈り物に、どうしようもなく嬉しさがこみ上げてくる。
買ってもらったぬいぐるみを抱きしめニヤニヤと微笑むと、運転している彼が横目に呟く。
『ぬいぐるみがそんなに嬉しかったのか?普通の女なら、宝石類とかの方が欲しがる所だけどな。本当、安上がりなやつだな。食事はどうする?思ったよりも遅い時間になったが。』
「もう今日が楽しすぎて、お腹がいっぱいになっちゃいました。何も食べれそうにありません。」
『そうか。ならこのままホテルに向かうぞ。』
ポンと一度頭に手を置いてから、今日泊まるホテルへと車を走らせた彼。
着いたのは都内でも一二を争う有名なホテルでその煌びやかなヨーロッパ調の外観にうっとりとしてしまう。
こんな素敵なホテルに彼と泊まる日が来るなんて、籍を入れたあの頃は考えもしなかった。
男性恐怖症である私と、人と生活を共にすることができない彼。
そんな2人が今、こうして手を繋ぎホテルのロビーに足を踏み入れる。