ワケあり同士による華麗なる政略結婚
その服は以前出かけた大型ショッピングモールであいつに買った服だ。
心の何処かで、澤村の言った事をまだ信じられずにいる自分がいた。
だが、こうして決定的なものを見てしまえば何を信じていたのか分からない。
静まりかえった暗いリビングにそのまま座り込んでいると玄関から音が聞こえた。
音のする方へ向かうと、先程送られてきた写真に写っていた女と同じ服を着たアイツの姿。
無言でその姿を見つめると俺の存在に気づいたあいつが、一瞬驚いた顔をして嬉しそうに笑った。
そして紙袋を手にこちらに向かってくる。
「真っ暗だったのでお帰りとは思いませんでした。只今戻りました。今日は早いお帰りだったんですね!凄く素敵なコーヒーショップを見つけまして、、とっても美味しかったので誠也さんへのお土産に買ってきました。良かったら今から飲まれませんか?あ、もしかしてお食事がまだですか?!でしたら何かお作りしますね!!」
そう言いながら慌ててキッキンに向かうあいつから、すれ違いざまに男物の香水の香りが鼻をかすめた。
その香水の香りは、以前アイツがここに友人を呼んだ時にかすめた香水の香りと同じ。
じゃあ、その時呼んだのもその男か、、?
全てが繋がった瞬間、自分の中で何がか切れるのが分かった。