ワケあり同士による華麗なる政略結婚


怪訝な声を出す澤村さんに覚悟を決めて、小さく呟く。















「、、今まで本当にすみませんでした。お二人の幸せを心から願っています。」




そう言って澤村さんの返事も聞かずに一方的に電話を切った。

そして携帯の電源を落とした。










それから多忙な彼を待たせてはいけないと急いで浴室へ向かう。

シャワーを浴びようと服を脱ぐと全身に付いた歯型のような痕。







普段の行為では私の名前を呼び、全身を優しく触れる彼。


でも昨日の彼は終始無言で、手つきも指先もキスも全てが荒々しかった彼。

今まで必死に耐えていた私との結婚生活がとうとう限界を迎え、感情が爆発してしまって歯を立てたのだろう。










そういう理由だと頭では分かっているのに、その痛々しい痕にさえ彼が付けたものだと思うと愛しさを感じて胸が苦しくなる。




政略結婚ゆえに離婚するにも色々と手続きや身辺整理に時間がかかるだろう。

だからきっとこれが完全に消える頃にはもう彼とは赤の他人。








その頃の私には、切なさと苦しさと耐え難いほどの悲しみが待っている。


彼が居ない生活。






つい半年前までそれが当たり前だったのに、どんな風に独りで過ごしていたかよく思い出せない。




だって彼は、私の生活の一部。
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