ワケあり同士による華麗なる政略結婚


それくらいこの〝半年〟という短い期間が私の人生の中でかけがえのない時間だった。






昨日から感情のコントロールが効かなくて、気をぬくと直ぐに涙が溢れる。

浴室の鏡に映る自分があまりにも酷い顔をしていて、慌てて涙を拭った。






それから無心でシャワーを浴びて、身なりを整えてから家を出た。


何処を行くにも地面を見ながら歩くしか手段の無かった私がバスを乗り彼の会社に向かう。







バスの中から見える景色をしっかりと胸に刻みつける。

離婚が成立すれば二度と見ることのない景色だ。







お洒落なお店が立ち並び、明るくて活気のある大通りを一つ奥の道へと進むと緑の多い公園もある。

それから交番を過ぎると見えてくる彼の働くオフィスビル。







あっという間に目的地に着いてしまった。

前来た時は長く感じた同じ道のりをそんな風に思えるようになった自分の変化が可笑しくて困ったように笑った。






そのまま笑顔が崩れないように彼が待つオフィスビルへと足を踏み入れた。


前回同様に入った瞬間に大勢の視線を感じたが、前だけを向いて堂々と受付を目指す。


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