ワケあり同士による華麗なる政略結婚


案の定、中には誰もいなくて少しホッとしてしまう。

覚悟はしてきたものの、やはり好きな人から別れを告げられるのはツラくて少しだけ時間が欲しかった。








入り口付近にあった電気をつけて椅子に腰掛ける。


そして目を瞑って、彼のと思い出を振り返った。







顔合わせの席では、一度も顔を上げる事が出来なかった。

そんな私に対してきっと彼は無表情で座っていたに違いない。







二度目は入籍を済ませてからの食事会。

結婚した自覚は全くなく、それでも心の中では家族に恩返しができたのだと勘違いしていた私。


だから少しだけ嬉しかった。








三度目はそれから半年も経った頃だったと思う。


結婚したというのに、会う事もない私達を見兼ねた両親達が開いた食事会。


向かい合わせに座らせられた2人は、終始無言で私は向かいの彼から放たれる威圧感に圧倒され恐怖で料理と手元しか見ることが出来なかった。

別れ際に〝じゃあ〟と初めて声を掛けられたが、声の低さに震え上がったのを覚えている。








それから何度か食事会という名の下で彼と会ったが、ただ怯えるだけで彼の事を見ようとも知ろうともしなかった。



< 284 / 311 >

この作品をシェア

pagetop