ワケあり同士による華麗なる政略結婚

既に自分の部屋に帰っているのを確認して、仕方なく軟膏と包帯をドアの前に置いた。






それでも何故かイライラが収まらなくて、1人の時間があんなに楽だったのにあいつの気配がしない事に、姿を見せない事に腹が立つ。


自室に戻って、このむしゃくしゃした気持ちをどうにかしようと携帯を手に持つと控えめなノックの音がなった。

ドアの前まで足を運んだが、症状が出るのを恐れてドア越しに耳を傾ける。









聞こえて来たのは少し緊張した声色だが、まさかの御礼の言葉。


てっきり一度も顔を合わせなかった事への文句か、むやみに触れた事への苦言かと思っていただけに拍子抜けだ。

少しドアを開け、声を掛けるとその隙間から細い手が伸びて来て服を掴まれる。






克服しようとしているのか、言葉を絞り出している間も手は離れる事なく握られたまま。

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