ワケあり同士による華麗なる政略結婚

そのか細い腕を見ていると、さっきまでのイライラは自然となくなり自分でも驚くほど穏やかな気持ちになった。

手当てをしてやろうと声を掛ければ、初めて聞く少し弾んだ声に自分の口角が上がるのが分かる。






腫れは引いたものの赤みは取れておらず明日、無理矢理にでも病院に連れて行こうかと包帯を巻きながら考えていると普通に会話をしている事に気付いた。








、、、もしかして顔が見えなければ症状はでないのか?


ただ会話しているだけなのに、そのドア越しの距離が少しもどかしく、耳をくすぐるその柔らかい声をもっと聞きたいと思ってしまう。
















だからなのか、本人は意味なく発したであろう言葉にめずらしく動揺して勢いよくドアを閉めた。







これが普通の女だったら誘われたと捉えるがそういう意味じゃないと分かっている。

頭では分かっているのに、最近ご無沙汰だからか反応してしまう自分に呆れる。


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