大逆転ラヴァー
「お前、好きな奴とか彼氏とか…いんの?」
「…は?そんなのいるわけないじゃん」
「そうか。まぁそうだろうな。お前みたいな女、貰ってくれる物好きな奴なんていないだろうし」
「嫌味?分かってるなら聞かないでよ」
「…」
「夏樹?」
「…だったら、さ。俺が貰ってやろっか?」
向けられた視線と投げ掛けられた問い。
ムカつく物言いなのに反してその瞳は真っ直ぐで…
何故か私の心臓はドキドキしていた。
「変な冗談言わないで」
「冗談?俺は本気で言ってる」
「バ、バッカじゃない?誰があんたなんか、」
「…あっそ。嫌ならいいや」
返した言葉のあと、フッと外された視線と共に向けられたのは夏樹の背中。
さっきまでゆっくり歩いてくれていたのが嘘のようにスタスタと早足で家とは逆方向に進んでいく夏樹に、再び私の気持ちは揺れていた。