大逆転ラヴァー
グシャグシャにされた髪の毛を整えながら歩く家までの道。
さっきから歩幅を合わせてゆっくり歩いてくれてるのは、夏樹なりの優しさなのか何なのか。
あ、思い出した。そういえば子供の頃はいつも手を繋いで歩いてたっけ。
私がどんなに意地悪しても、泣かせても、夏樹は絶対私の手を離さずギュッと握ってくれて。
それが素直じゃない天邪鬼な私を受け入れてくれてるみたいで、すごく、すごく…嬉しかったんだ。
「…なぁ、彩芽」
「なに?」
私の名前を呼ぶと、夏樹がピタリと歩みを止めたのはあの桜並木。
ここは私が毎年毎年、春に色付く桜を見ては夏樹のことを思い出していたあの場所だ。
隣にいる夏樹を見上げた時、視界に入ってきた空には綺麗な夕焼け雲が流れていて、夏樹の綺麗な髪が夕日に映えてキラキラと光っていた。