大逆転ラヴァー
「我が妹ながらキツイな…朝から心が痛い」
「よっわ。お兄ちゃんもさっさと食べれば?」
「へーい…あ、そーいえば。昨日、夏樹に会ったぞ」
「ゴホッ…な、夏樹!?」
多忙な両親が不在の平日の朝。
兄妹二人だけで朝食とるのは、もはや小さい頃からの習慣だ。
そんな中、突然兄の口から飛び出したその名前に食べていた食パンがノドに詰まる。
思いきり動揺してしまったのは、あまりにもタイムリーな話題だったから。
ついさっき、夢の中で何年かぶりに見た初恋の相手の話がタイミングよく出てきたら誰だってビックリすると思う。
「またこの街に戻ってきたんだってよ」
「ふぅん…」
「マジで変わりすぎてて声掛けられても全っ然気付かなかった。でっかくなってて…いやー、時の流れは恐ろしいな」
恐ろしいって…
所詮、あのチビで泣き虫の夏樹がちょっと成長してでかくなったってだけの話じゃん。盛りすぎ。
「たかが夏樹でしょ?お兄ちゃん大袈裟すぎなんだよ。んじゃ、いってきます」
「あ、おい。それで夏樹、今日からお前と同じ高校に…ってもう行ってるし」