大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

一緒にお風呂に入って、ご飯を作ってあげて、世話を焼く事を楽しんでいる俺に身の回りの世話をされた彼女は、俺のルームウェアの上をすっぽり被り、膝から下が心もとないらしく落ち着かない様子で俺の膝の上にいる。

着替えがないとか、化粧品がないとか理由をつけ俺の部屋から帰ろうとして、何度、身体を重ねても、つれない彼女と一緒にいるには俺が側にいるしかなかった。

朝、彼女の部屋で菜生に起こされて目が覚めると、すぐに彼女の腰を抱きしめ膝の上に座らせ首につけたキスマークを見て満足すれば、彼女は不機嫌に呟いた。

「もう、つけないでよ」

「約束できないな…」

痕が消えれば、またつけるつもりでいるから約束なんてしない。

「それなら、もう会わない」

…今の俺には独占欲を示す方法が他にないのに…平気で俺を突き放す。

だから、仕方なく妥協案を出すしかなかった。

「はあっ、わかったよ。見えないとこならいいだろう?」

「見えないとこならね」

ぶっきらぼうに言われたが、嫌がられていない事が嬉しくて、朝から菜生にキスせずにいられなかった。

今はまだ、曖昧な関係で好きだと言うには勇気がいるから、俺の愛情表情はこれしかない。

いつか、好きだと言える日が来ると信じて、唇を離した。
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