大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

健さんを忘れたくて、何も考えたくなくてめちゃくちゃに抱いて欲しかったのに、泣く私を一晩かけて優しく私を気遣いながら抱いて、泣き止んでも私を抱きしめてくれていた。

奏の腕の中はとても居心地がよかったが、遊んでいる彼となら後腐れなく終わり、忘れて過ごせると思っていたのに、身体中につけられたキスマークが忘れさせてくれずにいて、会わない間、私と同じように一夜限りの他の女にも、あんな風に優しく抱くのかと思うと、見も知らない彼女達にジェラーシーを感じる夜もあった。

偶然会えた時は、なんだか気恥ずかしくて距離を置いていたのに、「まだ、慰めてほしいんだろう」と言われて彼の腕の中の心地よさを思い出し、「抱かせろ」と言う奏の背中を押す優しさに甘え2度目も慰められる為に抱かれたはずが、奏の触れる指が優しくて、キスする唇が情熱的で、私を抱く奏を1人の男として意識させられ戸惑い、私はまだ、健さんを忘れられないと心を縛りズルズルと奏との関係を続け心をごまかしていた。

奏が家に来るからとか…

抱きたいと言うからとか…

理由をつけて、側にいても気がつかないふりをして、奏が、私の側にいる理由がなんでなのかなんて考えもしなかった。
< 137 / 211 >

この作品をシェア

pagetop