大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
でも、今ならわかっているつもりだ。
今は、まだ好きだと言ってくれないけど奏も私と同じ気持ちでいると態度で教えてくれるから、私の心は穏やかでいられる。
まだ奏に女の影がちらつくけど、奏はここに帰って来てくれる。
あんなに女を取っ替え引っ替えして、来るもの拒まず去る者追わずの奏が、私をただ一つの抱き枕だと言って抱きしめて眠るから、気にはなるけど、詮索はしないと決めた。
女の影がちらつく日がなくなるのと、素直に、好きと言える日と、どちらが先になるのだろうか?
人の気持ちも知らないで、幸せそうに寝息を立てる奏が急に憎らしくなり、鼻先をギュッと摘んで鬱憤を晴らし、奏の腕の中で重くなった瞼を閉じた。
まだ、浅い眠りの中、頬を撫でる指先があり、その指が唇を優しくなぞり、薄れる意識の中聞こえた奏の声。
「おやすみ…俺のツンデレ娘」
そう言って、優しく唇にキスをしてぎゅっと抱きしめてくれる安心感に、深い眠りについた。
朝、目が覚め、奏を起こさないように朝食の準備をする中、いい夢を見た気がして気分よく鼻歌を歌い玉子焼きを焼いていると、そっと背後に立った奏に抱きしめられて驚かされる。
「驚かさないで」
睨んでいるのに効果なしで、キスを仕掛けてくる奏に、朝食はブランチにかわった。