大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「リスみたいに膨らんでない」
頬を両手で隠して奏を見ると、奏が口元に手を当てて笑いを堪えていた。
「なんで笑うの?」
「笑って、ない…」
笑うのを我慢してるじゃん。
ギロっと睨むと、奏の笑い顔は苦笑いに変わり、前から包むように私を抱きしめてきた。
「揶揄って悪かったよ。お前に、泣かれたり拗ねられたりすると焦る。なぁ、機嫌直せよ」
俺様発言だけど、そんな酷い事を言われた訳じゃないし、いつまでも怒っているのも大人気ない気がして、でも、素直になれない。
「いーだ」
「生意気…」
私の顔を両手で掴んだ奏は、フッと軽く笑い私の唇にチュッチュと軽くキスしてきて、最後のキスはしっとりと甘く唇を食んでキスをやめてしまう。
つい、いつものようにもっとしてほしいと思うほど中途半端なキスに、唇は尖ってしまう。
その唇を奏の指が突っつく。
「尖ってるぞ」
「だって…」
「だって、なんだよ?」
「うっ…」
もっとキスしてほしいなんて素直に言えない…
のは、私の心なんてお見通しだと言わんばかりに意地悪な表情をする奏がいるからだ。
でも、キスを続けてほしい気持ちが強くて、奏の顔を見ながら彼の胸辺りをシャツを掴んだら、口角を上げ唇を突き出して私からするように催促する。