大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「…突然、なに?…いる?」
「いる。お前は俺を独占したくないか?俺は、お前を誰にも渡したくないんだけど!」
拗ねた顔で、覗き込んでくる奏にキュンとして頷いていた。
そして、お互いの左手の薬指にあるペアリングの裏には、2人のイニシャル入りだ。
駅前にある101ビル内にある宝石店「Eternal」は名前の通り永遠の愛をテーマにしたブランドを作り、いくつ種類があるが、どの指輪も1組分しか作らない唯一の指輪だからと若い年齢層に人気があるお店だ。
奏がなぜ、そこにしたかは理由はわからないけど、誰もが憧れるブランドなだけに、顔がにやけて指輪をつけた手を目の前にかざし見てしまう。
「にやにやして、そんなに嬉しかったのか?」
「直しに時間がかかったけど、奏と私だけのお揃いなんだよ。嬉しいに決まってる。ありがとう」
「おっ、素直じゃん。あの店にして正解だったな」
「私だってお礼言う時ぐらい、素直な気持ちで言うわよ」
ふん…だと、勢いよく繋いでいた手を離したら、引き寄せられて、奏に肩を抱かれながら歩きだしていた。
「その素直さで、言葉の愛情表現をしてほしいよ!」
「自分だって、何も言ってくれないくせに」
「俺は、言葉なんかより態度で充分に示してる」