大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

わかってるよ…

それでも、ほしい言葉があるんだもん。

「まぁ、喜んでくれてるから、今はこれで我慢するわ」

奏も、私の真似をして左手を目の前にかざして、嬉しそうにした。

「お前、絶対外すなよ」

「奏もね」

「菜生の他に女いないから、外す理由はなーし」

最後に、わざとふざけた口調に心がざわついた。

まだ、他の女の子と会ってるくせに…

時たま、奏から香る香水の匂いに気がついていても気がつかないふりをしてきた事を思い出して、チクッと胸が痛くなる。

まだ、素直にスキと言えない理由はそこにあるのだけど、奏には言えない。

私の下に帰ってきてくれるから…

こうして、ペアの指輪を買って嬉しそうにしてくれているから…

…言葉をほしいけど、今はそれだけで幸せ。

翌日、職場に指輪をつけて出勤したら、目ざとい人は『Eternal』の指輪だと気がついて羨ましいがる。

優希さんも、どこからか聞きつけてきて、お昼休憩に社内食堂に拉致られて、今、私以上にテンションが高い。

「Eternalの一点物だよ。いいなー、奏さん頑張ったんだ」

そう、一点物だから、それなりにお高いのだ。

「私も、臣くんにお願いしようかな…でもな、欲しがったら彼、意地悪だから買ってくれないよなぁ」
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