大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

紙をくしゃくしゃに丸め、階段を上がった私の足は重かった。

なんなの?

だれがこんな事?

ここを知っている人?

背筋がゾッとする。

部屋の前にも何かあったらと怖くて、恐る恐る近寄り何もない事を確認したら、すぐに部屋の中に入ってカギをかけた。

やだ…奏、早く来てよ。

奏の連絡をいまだに聞いていない事を今日ほど後悔した事はないぐらい、恐怖と不安で動けずにいた。

奏に関係のある女の人の誰かだ。

奏なら、誰か予想がつくかもしれないけど、誰だかもわからないのに話した事がこの人物に知れたら、逆上してエスカレートするかもしれない。

そう思うと、奏に話す事を躊躇われてクローゼットの奥底に隠した。

その日から、4日連続して毎日同じ内容のものがポストに入っていたが、今日は違った。

奏と私が写っている写真のはずなのだが、私の顔の部分だけ切り刻んである写真が何枚もあった。

奏が、私の部屋に入る瞬間の写真もあり、この人物はアパートの外にいるかもしれないと怖くなる。

辺りを見回すが、それらしい人物はいない。

階段を駆け上がった部屋のドアには、私だけが写る写真に、何かで何回も刺した写真が何枚も貼ってあった。

その刺し傷はドアに残ってしまっている。
< 146 / 211 >

この作品をシェア

pagetop